記憶

20年近く前になるでしょうか。
マーガレット・マーヒーの「ゆがめられた記憶」(岩波書店)という本を読みました。
自分のせいで友人が死んでしまった事を忘れたい少年と、昨日までの事を少しでも覚えておきたい老婆とが出会う物語です。
ちょうどその時、友達からテレビ番組の「世にも奇妙な物語」の記憶の話を聞きました。
確か、お金を得る為に自分の人生の記憶を売っていくという話でした。

忘れたい人と忘れたくない人。
そして、忘れてしまったら自分が何者か分からなくなった人。

その時、人生は「記憶」ではないかと思いました。。。

私の大好きな絵本作家は、講演でいつもおっしゃっています。
「今、この時、ここにいる皆が同じ体験をしていると思っていませんか?
 違います。
 私から見るこの景色と、皆さんからみる景色は違うんです。
 同じ場にいても、見てるものは同じではないんです。」と。
同じ体験をしているようで同じではない。
本当は一人一人全部違うんですね。

昨年の終りに、昔の友達が訪ねて来てくれました。
会うのは30年振りでした。
いっぱい遊んでいっぱい同じ時を過ごしたのに、
失礼な事に、最初私はほとんど何も覚えていませんでした。
話していくうちに少しずつ記憶がよみがえりましたが、
一つだけ物凄くショックなことがありました。
ユーミンのコンサートに連れて行ってもらったことを覚えていなかったのです!
常々私は「一回でいいし、ユーミンのコンサートに行ってみたいわ〜」と思っていました。
行ったことがある友達には「いいな、いいな〜」と言っていました。
それなのに・・・
30年前に行っていたのです!

なんで???? なんでその記憶が無いの??????

ショックでした。かなりショックでした。本当にショックでした(笑)
大好きなユーミンのコンサートに行った事を覚えていなかったなんて・・・
もし友人が訪ねて来てくれなかったら、
私の人生にユーミンのコンサートは存在しなかったのです。
きっと他にも、こんな風に大切な事を忘れてしまっているのだとしみじみ思いました。
忘れてしまっている事すら気付かずに、存在しないこととして・・・

自分はこんなにもあやふやな中で生きているんやなぁ。

人は自分勝手に見て、自分勝手に感じて、自分勝手に記憶していくのです。
そしてそれを自分の人生と思っている。
なんてあやふやな人生なのでしょうか(笑)
でも、面白い。だから面白い。
記憶を失くしてしまったら自分をも失くしてしまう環境にいるから、
「今、目の前」を大事にしたい。
きっと多分、それが全て。
私たちは尊い瞬間を生きているのですね。。。

いつか記憶にないユーミンのコンサートに、もう一回(?)行ってみたいと思います。
友達と一緒に(笑)